いつも動いてばかりの僕たちに、少しだけ休む理由をくれる魚がいる

今の時代、なんでも「アップデート」や「成長」が求められます。
常に動き続けていないと、置いていかれる気がする。

でももし、
変わらないことで生き延びてきた生き物がいるとしたら、
ちょっと気になりませんか?

今回お話を伺ったのは、ライターの伊藤さん。
Xやnoteで、水族館の魅力を発信している方です。

プロフィールに書かれていた「好きな魚:ポリプテルス・エンドリケリー」という一文が、妙に気になりました。

引用:photoAC

正直、初めて聞く名前。
調べてみると、怪獣みたいな魚でした。

背中にヒレがずらりと並び、
まるで時代を間違えて生きているような姿。

「これは、ただ者じゃないぞ」と思い、
すぐに伊藤さんに連絡しました。

変わらない魚、ポリプテルス・エンドリケリーを深掘りします。
その生き方には、
今を生きる僕たちに通じるヒントが隠れていました。

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見どころ①:怪獣のような背ビレ

エンドリケリーの最大の特徴は、背中に連なる十数本のヒレ。
それぞれが独立して動き、
まるで背骨が生きているように見えます。

伊藤さん

あのヒレの形、ちょっと怪獣っぽくて好きなんですよね

確かに、あの背ビレはインパクト抜群です。

僕は思わず聞いてしまいました。

「なんで、この魚ってこんな形をしてるんですか?」

伊藤さん

進化してないんですよ。
というか、変わる必要がなかったタイプなんです

なるほど。
この魚は、環境に合わせて形を変えたんじゃなくて、
変えなくても生きられる環境にいたということ。

おもろい。

他の魚が速く泳ぐためにヒレを小さくしたのに対して、
エンドリケリーは流れの少ない底でじっと生きる。
だから、ヒレが大きいまま形を変える必要がなかった。

ってかそもそもヒレってなんでついているの?

少し調べてみました。

魚のヒレは、人間で言うと「手足+舵+バランスボード」みたいなものらしい。

それぞれの部位にはきちんとした役割があります。

ヒレの種類主な役割イメージ
背ビレ体が横倒しにならないように支える(安定・バランス)スタビライザーのような働き
尾ビレ推進力を生む(前に進むため)エンジンに近い
胸ビレ方向転換・停止・浮き沈みの調整ハンドルのような操作舵
腹ビレ体の傾きを支える・ブレーキをかける姿勢制御の役割
臀ビレ横揺れの防止・姿勢の安定下の安定板のような働き

他の魚が「脚力を鍛えて走り抜けるアスリート」だとしたら
エンドリケリーは「体幹が強いゴジラ」みたいな感じでしょうか。

「怪獣みたい」っていう伊藤さんの言葉にも納得ですよね。

見どころ②:進化を止めた魚の選択

多くの魚が「速く泳ぐ」「強く生きる」といった方向に進化してきた中で、
ポリプテルス・エンドリケリーは、あえて止まることを選んだ魚です。

激しい流れにも逆らわず、
自分のペースで、底の世界をじっと見つめて生きる。

その姿を見ていると、
「進化しなかった」ではなく、
「進化を止める勇気を持った魚」なんじゃないかと思えてきます。

めちゃくちゃかっこいいですよね。

僕ら人間の世界はいつも
「変わらなきゃ」
「前に進まなきゃ」
と急かされます。

でも、エンドリケリーを見ていると
止まることにも意味があるんだと教えられる気がします。

僕なんか生き急いでばっかりですからね、、、

進むことしか考えてない。

動かないことを、怠けだと決めつけない。
変わらないことを、古いと切り捨てない。

素晴らしい。

それは、自分の環境で生きる力の表れだと感じました。

「止まる勇気」って、実はとても強い。
流れの中で立ち止まり
自分の呼吸を取り戻す。

そんなことを思わせてくれる魚でした。

見どころ③:流れのない世界で、生きる知恵

ここからは僕も少し調べてみたのでその話をしてみます。

ポリプテルス・エンドリケリーが暮らしているのは、
川の底や湿地、沼のようなほとんど動かない水の中。

僕らが思うよりもずっと“息苦しい”世界です。
水の中の酸素は少なく、流れもほとんどない。
普通の魚にとっては、まさに「酸欠地獄」みたいな場所。

でも、エンドリケリーはそこで平然と生きている。
その秘密はでした

魚なのに、肺!?

そう!

普通、魚はエラ呼吸ですよね。

けど、エンドリケリーには肺呼吸もできるんです。(※1)

特徴一般的な魚ポリプテルス
呼吸方法エラでのみ酸素を取り込むエラ+肺の両方
生息環境酸素が多い流れのある川・海酸素が少ない沼地や河川の底
酸欠時の対応弱って死ぬ水面に上がり、直接空気を吸う
行動泳ぎ続けて水を通す必要がある動かずにじっとしていても呼吸できる

しかも、頭の上にある噴水孔から空気を吸う魚。
つまり、水の外の空気を、直接“スッ”と取り込めるんです。

他の魚が「泳ぎながら酸素を取り込む」のに対して、
エンドリケリーは「泳がなくても呼吸できる」。

だから、動かない。
いや、動く必要がない
そして、進化する必要がない。

生きることに“省エネ”が効いているというか、
「流れがなくても、生きていける」っていう選択をしてる感じ。

考えてみたら、人間も似てるかもしれません。
いつも流れに乗ろうとして、変化を追いかけて、
息を切らせて進んでる。

僕なんか本当にこのタイプ、、、

変化しなきゃって思ってどんどん首が締まる。

でも、この魚は違う。

「動かなくても、生きていける方法を見つけたんだよ」

って、どこかで笑ってる気がします。

環境に合わせて呼吸の仕組みを変える。
その結果、“変わらない強さ”を手に入れた。

変化の激しい時代に、
「変わらなくてもいい」と言ってくれる魚がいる。

それだけで、なんだかちょっと、救われませんか。

おわりに

ポリプテルス・エンドリケリー。

とってもおもろい話が聞けました。
「止まっているようで、ちゃんと生きている」と感じました。

進化をやめた魚ではなく、
完成を見つけた魚。

速さが価値になる時代だからこそ、
この魚の存在が、少し心に沁みます。

我々は進むことが正義と考えているけど

立ち止まって考えることも正義。

深く考えさせられる魚だと感じました。

伊藤さんのXやnoteでは、

そんな「水槽の中の哲学」みたいな世界を、日々発信しています。

ちょっと覗いてみてください。

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参考文献

  1. Hendre.EverythingyouneedtoknowaboutBichirs.MonsterFishKeepers.com,2020年5月5日.
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